観劇日:2024年7月26日 19:30公演
劇場:Gillian Lynne Theatre
こんな方におすすめ
・ストプレが好き
・ナショナルシアター作品
(実際には、Sheffield Crucible劇場で作られて、WEへと移ってきた作品)
作品タイプ
「Dear Evan Hansen」「Next to Normal」「ジェーン・エア」「Fun Home」
2023年Olivie賞で新作ミュージカル賞を受賞した「Standing at the Sky’s Edge」
8月3日までの上演とのことで、滑り込み観劇!
ちゃんと戯曲を読んでから書こうと思っていたら、すっかり時間が空いてしまいました。
よく、BWとWEのミュージカルって何が違うのって聞かれますが、
まさにイギリスで作られたミュージカルだなあという印象の作品でした。
ミュージカル作品ではあるけれど、ストプレを見ているようで。
1つの部屋を軸に描かれる3世代の物語。
最後に各世代が繋がっていく様がお見事でした。
あらすじ
舞台は、イギリス中部・SheffieldにあるPark Hill 団地。
– I Love you Will U Marry Me というネオンサインが目を引く建物。
その建物の1部屋で、異なる時代に暮らした3世代の物語。
1960年、結婚したばかりのRoseとHarry夫婦。
子供が生まれてから、少しずつ気持ちにすれ違いが起きるように。
時代はサッチャー政権となり、Harryの働く鉄鋼会社にも影響が出てくる。
戦おうとしない夫に呆れて、家を出ていくRose。
それでもちゃんと話そうと、Roseが大晦日に家へ帰ってくると…
1989年、リベリアから従姉弟と移り住んできたJoy。
ある日、家の前で少年に絡まれていたところを助けてくれたJimmyと恋に落ち、結婚。
娘・Constanceが生まれて、楽ではなくとも、互いのことを大切に思い生きている。
一度は、オーストラリアへの移住を考えたものの、Sheffieldで暮らしていくことを決意。
大晦日の夜に、家族が待つ家へと向かうJimmyに…
2015年、不動産屋のConnieから紹介され、この部屋に住むことを決めたPoppy。
両親からは別れた恋人から逃げるために無理をしているのではと心配されつつも、
新しい暮らしへと前を向いている。
仕事に励み、友達と楽しい時間を過ごす中、元恋人・Nikkiが訪ねてくる。
「結婚しよう」と改めてプロポーズをするNikkiを強く拒否するものの、
大晦日の夜に再会した彼女へと抱く、Poppyの想いとは…
異なる時代が交錯し、それぞれが迎える大晦日の夜。
観劇してみて
3世代が交錯するということで、もっと混乱するかなと思っていたら、
とても分かりやすく演出されているなと思った。
1960年、1989年、2015年と年代が表示された3つの電光掲示板、そして、
各時代を生きる3人の女性にスポットライトが当たる冒頭。
新婚ほやほやの主婦、Rose。
リベリアからの難民、Joy。
恋人と別れたばかりのキャリアウーマン、Poppy。
時代は違えど、希望と不安が合わせ混ざった静けさを共通して抱いているようで。
自然と物語への集中力が高まっていく場面で素敵だった。
物語の中で、少しずつ登場人物に繋がりがあって、
1番目のRoseとHarryの息子・James(Jimmy)は、
2番目のJoyが同年代の男の子に絡まれていたところを助け、後に結婚する。
そんなJoyとJimmyの娘・Constance(Connie)は不動産屋で働いていて、
3番目のPoppyに、まさに自分が暮らしていた家を紹介する。
過去に同じ部屋に住んでいた人に出会うって、どんな感じなんだろうと思った。
良くも悪くも色々な想いがある空間に、他の人が住んでるって、
少し切ないようなと個人的には思ったり。
そんな懐かしさと寂しさが混ざったような感情を
JimmyがJoyに出会ったとき、ConnieがPoppyに家を紹介したとき、抱いているように感じた。
物語を通して、「家」って何だろうなあと考えて。
賃貸の場合(購入であっても)、過去に同じ場所で生活をしていた人がいる。
現実では前に住んでいた人に会うってことは、ないかもしれない。
それでも、自分がそこで暮らすように、毎日生きていた人がいて、
きっとそれぞれに人生があって。
同じ場所に住んでいても、その場所がhome、避難所、自由、逃亡、と住む人によって空間の見え方が変わる。
白くてシンプルな美術セットでも、色味が違って見えてくるようで。
上演台本を読み返していて、印象に残ったGeorge(Joyの従兄弟)の言葉。
”But I don’t think home is a place, really. I think it’s the people you find,
and the people you take with you (Standing at the Sky’s Edge/ Chris Bush)
家とは場所のことではなくて、そこで出会い、一緒に過ごす人たちのこと。”
奥深くて、素敵。
Connieが進行役のようなポジションで話す幕開きと終幕の台詞もとても素敵。
【幕開き】
Three households, decades apart
Sharing one roof, one sun, one hope
To root themselves
Become an eighth hill
In this man-made monolith
To matter to someone
To make something of their days
As the dawn breaks
And breaths are held
Because this moment won’t come again.
Savour the stillness, then –
時代の離れた3つの家族
1つの屋根、朝日、そして希望を分かち合い
自らを根付かせるために
8つ目の丘となるように
この人間が作った大きな建物の中で
誰かの大切な存在になるために
日々の中に何かを見出すために
夜明けが訪れたとき 息をひそめて
この瞬間は二度と訪れないから
静寂をゆったりと味わって
【終幕】
A thunderbolt sign
Writ large in neon, if you like
A reassurance there’ll be something left
Once the shine’s worn off
That their foundations are solid
That they are stronger than the monolith
Oh, it’s the hope that kills you
But also keeps you alive
Without it, this little box could never keep out the rain
So they hold their breath
Because this moment will never come again.
雷のようなサイン ネオンに大きく書かれた
たとえ輝きがなくなったとしても
何かが残るという確かな安心感
彼らの繋がり(土台)はしっかりしていると
建物よりも強く揺らがないものだと
希望は人を打ちのめすかもしれないけど、生かすものでもある
希望がなかったら、この小さな部屋は雨をしのげない
だからこらえて、踏ん張って、
この瞬間は二度と訪れないから
Standing at the Sky’s Edge/ Chris Bush(上演台本からの引用)
始まりと終わりで、少し違う。
期待通りにならなくても、希望を持つことや前を向くことを嫌いにならないで、
今この瞬間を大切にしようっていう言葉が素敵だなあと。
そして、印象的だった音楽。
Sheffield出身のシンガーソングライター・Richard Hawleyの楽曲を使っていて、
いわゆるジュークボックス型。
(脚本家のChris Bushも同じくSheffield出身。)
全然知らない方なんだけど、哀愁、パワー、希望、感情の吐露と楽曲が鮮やかだった。
始まりと終わりで歌われる♪As The Dawn Breaks
すごく朝日の明るさと希望の輝きを感じた楽曲。
晴れていなくても、朝の空気って、昨日からリセットされて、新鮮だと思うから。
2幕冒頭に歌う♪Standing At The Sky’s Edge
キャスト全員、スタンドマイクでの歌唱。
照明が上から刺さる感じもかっこよかった。
すごく劇団☆新感線の開演前の音楽を連想した。笑
アンサンブルの歌唱力もお見事で。
舞台中心で物語が進行していく中、舞台端でスタンドマイクで歌うシーンも多くて。
それぞれパワフルな歌声がかっこよかった!
今回の劇場
劇場は、Sohoエリアの少し東側にある「Gillian Lynne Theatre」
25年3月からはトトロの上演も予定されている劇場。
劇場入ってすぐのロビーは狭めで、階段やエスカレーターで座席階に上がっていく構造になっていました。(ブリリアに少し似てる印象かな)
上る途中の踊り場にグッズ売り場があったり、
円形ステージ故か客席扉が、ちょっと不思議なところに分散している印象でした。
開演30分前に入った割には、人も多くて、あまり写真が撮れなかったのですが、
また次回行くときがあったら、再挑戦…
Stalls(1階席)エリアのロビーまで上がってきたら、左手に進むとお手洗いがありました。
個数は多め(日生劇場くらい?)ですが、割かし列が長かったです!
座席はStalls/Circle の2階層に分けられていて、全1,294席。
各座席からの見え方はこちらのサイトが参考になります!
今回のチケット
TodayTixのRushチケットを購入しました!
価格は30ポンドで、日本円だと6000円くらい。(24年8月時点)
Stalls(1階席)の後ろから2列目と後方ではありましたが、
少しステージ上部が屋根と重なるくらいで、全体を俯瞰して見やすい席でした。
円形ステージでの見切れ、近さも問題なし。
最後に
どの世代も少なからずHope・希望を抱いて入居してきて、
ただ、本当に、いつどんなことが起こるか分からない人生。
今この瞬間は戻ってこない。(No day but todayだ~~~~)
誰かと喧嘩をしても、慈しむことは先延ばしにしないで、
大切にしようって語りかけてくるような作品。
観劇後に嚙み砕いた時間も含めて、素敵な作品でした!
「Standing at the Sky’s Edge」
上演概要
公式HP:https://www.skysedgemusical.com/
劇場:Gillian Lynne Theatre
上演期間:2024年8月3日 上演終了
上演時間:約2時間50分/休憩含む
Cast
Harry:Joel Harper-Jackson -鉄鋼会社で働く。Roseの夫。
Rose:Rachael Wooding -Harryの妻。
Jimmy:Samuel Jordan -HarryとRoseの息子。後に、Joyと出会い、結婚する。
Joy:Elizabeth Ayddele -リベリアからの難民。
(10代の少女から母親まで、お芝居の変化がとても素敵でした。)
Grace:Sharlene Hector -Joyの従姉妹。
George:Baker Mukasa -Joyの従兄弟。
Poppy:Laura Pitt-Pulford -30代女性、恋人と別れたばかり。
Nikki:Lauryn Redding -Poppyの元恋人。
Charles:Adam Price -Poppyの父親。
Vivienne:Nicola Sloane -Poppuの母親。
Connie:Mel Lowe -不動産屋。JoyとJimmyの娘。
Marcus:Alastair Natkiel -Poppyの同僚。
Young Connie:Alayna Anderson, Renee Hart, Chioma Nduka
Young Jimmy:Luca Foster-Lejeune, Eric Madgwick, Sam Stocks
ほか
(パンフレットを見ていると「Onstage Swing」の方が多いのが印象的でした。)
Creative
音楽・歌詞:Richard Hawley
脚本:Chris Bush
演出:Robert Hastie
美術・衣裳:Ben Stones
振付:Lynne Page
オーケストラ・音楽スーパーヴァイザー:Tom Deering
照明:Mark Henderson
音響:Bobby Aitken
ヘアメイク:Cynthia De La Rosa
キャスティング:Stuart Burt CDG
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!