観劇日:2024年11月16日 19:30公演
劇場:Theatre Royal Haymarket
こんな方におすすめ
・ストレートプレイが好き
・会話劇が好き
・フランス劇作家の戯曲が好き
不条理演劇の代表作と言われる「Waiting for Godot」
1952年にフランスの劇作家、サミュエル・ベケットによって書かれた戯曲です。
今回が初めましての観劇だったのですが、出会えてよかったと思った戯曲でした!
あらすじ
一本の木が立つ荒地。
見渡す限り、他には何もない場所でおしゃべりをしているEstragonとVladimir。
彼らは、Godotが来るのを待っている。
待ちながら、木で首吊り自殺をすることを考えてみたり、
中身のない会話を続けていると、二人の男性が通りかかる。
高慢な態度のPozzoと首紐を付けられた彼の召使いのLucky。
Pozzoは二人に対しても高圧的に話し、Luckyを奴隷のように扱う。
両手に荷物を抱えたLuckyは、長い演説を披露し始める。
やがて二人が立ち去ると、Godotの使いだという少年がやってくる。
「Godotは今日は来ない。明日は来るだろう。」
翌日、同じ場所でGodotを待っている二人。
時間を持て余しているところに、再び通りかかるPozzoとLucky。
Pozzoは目が見えないと言う。
そして、またGodotの使いだという少年がやってきて…
観劇してみて
予備知識なく、ぽーんと飛び込んでの観劇だったのですが、
「??」が残りつつも、とても面白い作品だと感じました。
観劇後に作品のことを調べて、「不条理演劇」の代表作と評されているのを知ったのですが、
そもそも「不条理演劇」という言葉が、すっと入ってこなくて。
どういうジャンル??って
不条理という言葉を調べてみると、以下の意味でした。
不条理
1 筋道が通らないこと。道理に合わないこと。また、そのさま。
2 実存主義の用語。人生に何の意義も見いだせない人間存在の絶望的状況。カミュの不条理の哲学によって知られる。
不条理/goo辞書 出典:デジタル大辞泉(小学館)
ああ、なるほど。確かに「不条理」な世界だったと、少し腑に落ちました。
何が描かれていたのかというと、具体的に説明できるものではなくて。
けど、観客に委ねられる余白が大きいからこそ(大きすぎるくらい)、
自由に思いを巡らせるのが面白い作品なんだと思いました。
じゃあ、何を感じたかというと、まずは「時間」のこと。
物語の節々で、どういう風に時間が経過しているのかが分からなくなって。
「いつになっても夜が来ない(夜が来る気がしない)」
「ゴドーは今日は来ない、明日は来るだろう」
「昨日会ったのに覚えていないのか」
一幕と二幕。どちらも始まりと終わりが同じように演出されていて、まるで物語が振り出しに戻ったかのような感覚。
台詞の中では、二幕で「昨日」という言葉が出てくるから、一幕は「昨日」の出来事で、
連続した二日間が描かれていると思っていたけど、
Pozzoが二幕で盲目になっているのはなぜなのか。
そんな昨日今日で、目が見えなくなるなんてことあるのか?
実は、「昨日」と言っているだけで、ずっと前のことなんじゃないか。
いや、Pozzoに急なアクシデントがあって、見えなくなってしまったのかもしれない。
何が本当か分からんな…と時の流れがふわふわしているような作品。
そして、きっと二人がいるのは、一本の木以外、何もない場所。
身なりも汚い。
食べないし、そもそも食べ物がない。
くだらない内容をテンポよく会話していて、お客さんもよく笑っているから、
究極の暇つぶし、退屈しのぎをしている穏やかさも感じる。
特に、二幕で転んだPozzoを助けようとして、自分たちも転んで、そのまま寝転がって話している場面。
きっと起き上がれるはず。
ただ、起き上がらずに、Pozzo達を下敷きにしたまま、だらだらと話し始める。
観ていて、「これは…何の時間なんだ…」と思ったり。笑
けれども、ご飯食べてないな、どうしてEstragonは足が痛いのか、自殺しようとするのは何故か、
どこで寝てるのか、寒さや暑さは感じないのか、一体ここはどこなのか。
見えていないこと、人間が生きる上で日常的にすることが欠けていること、ちょっとおかしいなと感じることが、どんどん積もっていく。
その結果、今見ているのは、
本当に一日で起きた出来事なのか、これまでの人生で起きたことをつなぎ合わせているのか、
二人はどれくらいGodotのことを待ち続けているのか。
どの時間のことなんだろうって。
仕事をしていて、暇なときほど時間が長いと感じるように、
Godotが来るまでの時間が無限にあるように見えつつも、
飢え、痛み、絶望、不安っていう要素から、無意識に命の危機を感じるのか、
時間はやっぱり有限であるとも感じる。
その矛盾が不思議で面白いと思いました。
じゃあ、Godotは?
生きる意味、目標、夢、希望、喜び、お金、食べ物、相対的な「良いこと」、
ただ、待っているだけでは手に入らないもの。
「死」だとしても、確かに交通事故、病気とか予期できないことで、
急に降りかかるということもある。
けど、どんな形であれ、人生を生きた先にたどり着くものなのかなと。
二人のこれまでの人生は見えないけど、現時点で、自分で何かを選択する気力が
ない彼らには、Godotはやってこない=何も叶わないんじゃないかと思った。
Godotが来ないなら、少年の後を追いかけてみるとか。は、しない。
じゃあ、二人みたいにゆるっと生きてちゃいけないのか、というわけではない。
だから、生きるってなんだろうねえ。という壮大なことを感じた作品でした。
演出が違うと、また感じることも違うだろうなと、戯曲の強さを感じました。
今回の劇場
劇場は、トラファルガー広場のすぐ近くにある「Theatre Royal Haymarket 」
道路の反対側には「オペラ座の怪人」の劇場がある通り。
もう、だいぶ馴染んできた、客席階によって入口が分かれている劇場。
今回はRoyal Circle (2階) での観劇だったため、指定された扉から、いざ入場!

案内に従って、階段を上がっていきます。
なんかおしゃれな装飾と思ったら、「For Cigarette Ends」と書いてあって。
昔はここで煙草を消したりしてたのかな~と思ったり。


階段を上がると、お手洗いとバーがありました。
個室が2-3個と少なかったうえに、中がめちゃくちゃ狭い笑
狭すぎない?????


客席内も豪華な装飾。少し「Next to Normal」を観たWindham’s Theatreと雰囲気が似ているなと
感じました。

今回、開演前も休憩中も幕が下りていたのですが、セットが面白くて。
四角い大きなお皿みたいな形状の荒地が、舞台上に乗っていて。
幕が開くと、右斜め前に少し回転するんです。
そして、四角い舞台の端が、ステージ前方から少しはみ出る。
うーんと、食パンに四角いチーズをのせるときに、四隅を同じ角度でぽんって乗せるんじゃなくて、
角がずれるように乗せる感じ。チーズが溶けると、ぺろんってパンからはみ出るようなイメージ。笑
大きな転換は全くなくて、ただ、幕が開くと、そんな風に舞台が動く。
平行になっているより、急にでこぼこした斜面と立体感を感じるのが面白かったです。
座席はStalls/Royal Circle/Upper Circle/Gallery の4階層に分けられていて、全893席。
Stallsエリア(1階席)のS列以降は、上階の屋根が視界に入ってくる席もあります。
各座席からの見え方はこちらのサイトが参考になります!
今回のチケット
「Today Tix」アプリからRushチケットを購入しました!
価格は30ポンドで、日本円だと6000円くらい。(24年11月時点)

表情を見るには、少し遠いかなと感じましたが、舞台全体をゆったりと観られました!
最後に
この作品を観て、ふと思い出したのが、
佐々木蔵之介さんが出演していたPARCOの「マクベス(2015年)」
精神病院の患者が、毎日マクベスを一人で演じ続けているという新しい演出だったもの。
結末で、これを毎日繰り返しているんだと気づいたときの怖さ。
終わりが見えないことの不安定さが、少し似ているなと思い出しました。
人によって、色んな解釈があると思います。
ぶわっと頭の中で想像力が広がるような素敵な作品。
観劇する機会がありましたら、ぜひ!!
「Waiting for Godot」
上演概要
公式HP:https://waitingforgodotplay.com/
劇場:Theatre Royal Haymarket
上演期間:2024年9月19日~12月21日 上演終了
Cast
Estragon(Gogo):Lucian Msamati – Godotを待っている。
Vladimir(Didi):Ben Whishaw – Godotを待っている。
Pozzo : Jonathan Slinger – 高慢な男性。
Lucky : Tom Edden – Pozzoの召使い。彼の荷物を運ぶ。
Boy : Alexander Joseph – Godotの使い。
Creative
作:Samuel Beckett
演出:James Macdonald
美術・衣裳:Rae Smith
照明:Bruno Poet
音響:Ian Dickinson, Niamh Gaffney
ヘアメイク:Campbell Young Associates
キャスティング:Amy Ball CDG
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!